ロードバイクを買ってから、年イチで必ずチェックするようにしているのがホイールの振れ。素人仕事なので精度の方は「やらないよりはマシ」程度ですが、何事も経験だと思って続けています。
ただ今回は、これまでとは少しだけ勝手が変わりました。なぜなら、昨年の春に手に入れたグラベルバイク「トップストーン・カーボン」のリヤ周りは、キャノンデールの独自規格である「Aiオフセット」仕様だから。とってもマイナーな話で恐縮ですが、もし、それが理由でキャノンデールのバイクに足踏みしている方がいるのだとしたら、多少はお役に立てるかもしれません。
Aiオフセットとは
Aiと聞くと「ヘイ!」とか「オッケー!」とか思わずバイクに話しかけたくなりますが、キャノンデールのそれは人工知能ではなく、Asymmetric integrationの略語です。直訳すると「非対称な統合」……なんのこっちゃい?という感じですが、要はリヤのチェーンステイがドライブ側(スプロケットがついている右側)に大きく張り出したフレーム設計のことです。
なんでわざわざそんなことをしたのかというと、大きなホイールと太いタイヤをもつ29erのマウンテンバイクを機敏に走らせるためなのだそう。Aiオフセットのおかげで、チェーンステイを短くできる上、ホイールの剛性もスポークテンションの左右差が減ることで、80%近く向上するらしい。吉尾がロードバイクからグラベルバイクに乗り換えた際、それほど違和感がなかったのはAiオフセットによる短いチェーンステイのおかげだったのかもしれません。
ホイールのメンテにはちょっぴり工夫が必要
性能は素晴らしく感じるAiオフセットなのですが、振れ取りやセンター出しなどホイールのメンテナンスにはマイナー規格ゆえの独自のtipsがあります。
振れ取りは片側ずつ
ノーマルのホイールは上画像のとおり、ハブ+スプロケットの中心にリムがあります。そして前後輪どちらも同じ構造ですから、振れ取り台も同じように使えます。でも、Aiオフセット対応ホイール(Aiホイール)は、リムが6mm左側(反ドライブ側)にズレています。振れ取り台のツメは左右どちら一方しか使えません。
まあ少し手間ですが、左右をひっくり返しながら作業していけば良いので、「そういうものだ」と割り切ってしまいましょう。
センター出し用のジグ作り
次にAiホイールのセンター出しです。市販のセンタリングツールは、やっぱりそのままでは使えません。ノーマルホイールは左右どちら側からでも調整を始められますが、Aiホイールは必ずドライブ側から始めましょう。そのあと反対側にあててみると、ツールとハブの間に空間ができるはずです。その寸法が12mmならAiホイール的なセンターが出ている状態です。
いちいちノギス出してくるのは億劫ですし、不器用な吉尾には正確に測る自信もありません。そこで、家にあるナットを使ってジグを作ってみました。ちょうど12mmになる組み合わせが見つかってめでたしめでたし!
スポークテンションの初期値を測ってみると
Aiホイールは構造上、スポークが左右同じ長さなのだそうです(ノーマル仕様はドライブ側が短い)。そのためスポークのテンション(張り具合)もイーブンなのだとか。
ドライブ側のテンションが反ドライブ側の倍くらい強く張るノーマルホイールの感覚で作業してしまうと、これまたよろしくありません。自分で手を入れる前に今の状態を測っておましょう。基準とするなら、本当はプロの調整直後=納車時に測っておくべきでした。
【スポークテンション:kgf】
リヤ(Ai+ディスク) | フロント(ディスク) | |||||
左 | 右 | 左右比 | 左 | 右 | 左右比 | |
平均 | 85 | 108 | 79% | 98 | 64 | 153% |
最大 | 100 | 146 | 68% | 146 | 77 | 190% |
最小 | 52 | 87 | 60% | 52 | 41 | 127% |
吉尾のAiホイールは左右均等とはいかず、平均で2割ほど右のスポークテンションが高い。確かにノーマルホイールほどの偏りはないけれど、傾向値は同じでした。ディスクブレーキのフロントホイールは、リヤとは反対にディスク側(左)のスポークテンションが高くなるようです。
おまけ
Aiホイールって交換できる?
ロードバイクでもMTBでもホイールのグレードアップはカスタマイズの定番です。しかし、ことAiホイールの場合は若干ハードルが上がります。いわゆる「完組ホイール」のAi仕様ってほとんどないんですよ。実は、言い出しっぺのキャノンデール自身も”Aiホイール”として売っているモデルはほんの僅かだったりします。
RE-DISHって要するに……
「ひょっとしてオワコン?」と思っていろいろ調べてみたら、キャノンデール的には「市販のノーマルホイールのセンターを自分でずらせばOK!」という考えのようです。これをRE-DISHと呼んでやり方の動画もあがっていました。
REは「再び」DISHは「皿」。ノーマルホイールにもdishingという語形で、自転車用語として一般的に使われている言葉みたい。振れ取りだったりセンター出しのことをひっくるめた意味合いのようです。
Aiホイールは手組みが良いかも
動画を見ていると素人でもかんたんにRE-DISHできちゃうような気分になりますが、ショップの見解はかなり慎重です。完組ホイールに使われているスポークはそのホイールに最適化されているので、RE-DISHできないケースもあるらしい。
「やってみるまでわからない」そんなチャレンジにはかなりソソられるものがあるのだけれど、たいがい裏目に出るのがお約束。安心路線でいくならショップに「手組みホイール」をオーダーしましょう。せっかくですから、リムやスポークといったパーツをひとつひとつ吟味して凝りに凝ったひと組に仕上げていただく、とか。うーむ、それはそれで憧れますねえ。
吉尾エイチでした。m(_ _)m
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