自転車メディアのシューズの記事って、ソールの硬さや重さなどのスペックやブランドのストーリーばかりで、サイズ感について触れているものがないのが不思議でした。読者全員がそのシューズを履ける前提で書いているのかな、と。
シューズって、ギネス級の特殊な方を除くとだいたい30cmに収まる世界。その分、1ミリの違いが大きく響くので、ごまかしが効きにくいんですよね。かつて婦人靴のバイヤーを10年ほどやっていた際、デザインは気に入ったのに、足に合わず諦めたお客様を何人も見てきました。
ビンディングシューズも同じで、どんなにハイスペックなモデルでも、自分の足型に合わない靴は世の中に存在していないようなものです。履けない靴は、どう頑張ってもとにかく履けなかったりしますから。
シューズ選びの第一歩は自分の足型にあったブランドを探しだすこと。ただ、この「自分に合う」という感覚を掴むのが思った以上に難しいんですよね。そこで今回は、フィッティングの際に履き心地を確かめる基本的なポイントと、吉尾自身が体感した足型とシューズブランドとの相性についてお伝えします。
フィッティングの時に必ずチェックすべき5つのポイント
「靴の履き心地」という曖昧な感覚をできるだけ定量的に分解すると、最低でも5つの要素に別れます。一方で、パーフェクトな靴を探し始めるといつまでも買うことができなくなるのが現実ですから、まずは①〜③を重視してフィット感を確かめていきましょう。
①足長
つま先からカカトの後ろ側までの長さ。両足の足長が同じことはまれなので、どちらか長い方の足に合わせます。サイズの目安としてもっともポピュラーですが、海外ブランドの表記は日本のセンチ表記とは異なります。
・日本(センチ表記)
つま先からカカトの後ろ側までの長さをセンチ表記。靴自体の長さは足長につま先の遊び(捨て寸)が足された長さ(+1.5〜2センチ)になります。
・US (インチ表記)
靴のカカトから 3 + 11/ 12 inch(約99.5mm)の部分を起点として、つま先までの長さをインチ (1インチ=2.54センチ)で表記。
・EU (センチ表記)
2桁の数字で表記されていますが、単位は日本と同じ「センチ」。なぜか0.67センチを1として数え、そこから捨て寸の2センチを引くというややこしい計算をしています。
②足囲(幅×高さ)
足の一番幅の広い部分を結ぶようにぐるっと一周させた長さ。靴幅の目安として「ワイズ」とも呼ばれますが、実際には幅と高さを合わせたサイズ。普段履きの靴には「EE」「EEE」とローマ字で表記されているものが多いのですが、海外ブランドが多いビンディングシューズではまず見かけることはありません。
ただ、ブランドによってワイズの傾向があるので、自分の足型によって履けるブランドがある程度決まってしまいます。一般的には海外ブランドは細め、アジア向けのモデルは広めであることが多いです。
③足先のカタチ(足指の長さ)
人間の足先は大きく3つに分類できると言われています。親指から小指にかけてなだらかなカーブを描く「エジプト型」。人差し指が1番長い「ギリシャ型」。5指がほぼ同じ長さの「スクエア型」。
靴のカタチが自分の足先にマッチしないと、足指が当たってストレスを感じたり、つま先以外はブカブカの靴を履くことになり、とても疲れます。
④カカト
「靴はカカトで合わせる」。シューズフィッティングではセオリーですが、ビンディングシューズではそこまで選択肢に入れてしまうと、選ぶ靴がなくなるかも。
靴幅に対して大きめに作られていることが多いので、カカトの幅が細めだったり、後ろへの出っ張り具合が控えめな方はどこかで妥協することになります。どうしてもフィッティングを追い込みたい!という場合は、カカトを熱成形できるモデルを選ぶのも一案。ただ、普通のシューズ以上に技術が必要ですから、ノウハウのあるショップを選びましょう。
いずれにせよ靴のカカト部分は、脱ぎ履きを繰り返すうちにだんだんと開いてくるだけに、なるべくタイトな履き心地のものを探したいもの。
⑤土踏まずの高さ(アーチ)
こちらもピッタリくるものに出会う確率は低いです。高すぎると足裏が痛くなってしまうので、万人に合わせたデフォルトのインソールのアーチは総じて控えめだからです。ただ、ここが決まると靴の中で足が安定するので、アーチが高めな方はスポーツインソールを試してみましょう。それ以上に履き心地を追求するなら、やはり熱成形の世界に突入します。
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