【Stravaのアップデート】”新しいトレイル機能”に感じるリスクと期待

書き留めておきたい日々のこと

数年前から静かに広がってきたアクティビティのオフロード化。コロナ禍を経て、ランもバイクも「密でない環境」や「レース以外の楽しみ方」を求めて、活動エリアをトレイルやグラベルへ移行する動きが一気に加速した印象です。

そんなトレンドは世界共通であるようで、あのStravaにトレイルのルートを提案してくれる新機能が実装されました。今回の記事ではアップデートの実際とその先について考えてみました。

トレイル新機能のポイント

まずはStravaのリリースからアップデートの内容を確認します。

①サブスク会員限定&アプリ限定
②マップ画面の左下「スポーツ選択」にハイキング・トレイルラン・グラベルライド・マウンテンバイクライドが追加
③選択したスポーツに合わせてルートを提案してくれる
④ルートの詳細画面では混雑状況と勾配図を表示

https://support.strava.com/hc/ja/articles/6423083264269-トレイルアクティビティ

吉尾がオフロードのルートを探す場合、先輩サイクリスト達のブログはもちろん、オートバイやクルマ、ハイカーの皆さまが残してくれた情報をとにかく集められるだけかき集めます。

日本のオフロードにはさまざまな事情が絡んでいるので場所をはっきり書かないのがお約束。あとは地図アプリと想像力を駆使してアタリをつけて、ルートらしきものを引いていく感じ。それをドンズバで提案してくれると聞けば、どうしたって期待しない方がおかしいですよね?

おすすめルート機能は今後に期待

トレイル機能を早速使ってみると、確かに複数のルートを一瞬で提案してくれます。ただ、その内容を見ていくと、「ここは自転車ではムリなのでは?」と思える道だったり、全て舗装路のルートを”グラベル”として提案されたり……。中の事情がわからない1ユーザーとしては、ちょっとチグハグな印象を受けました。

おすすめルートはStrava自身のリコメンドではなく、ユーザーの走行データを集計してのアウトプット。なので、みんなが使い始めて、ログが集まらないと十分に機能しないのかもしれません。

オフロード系のスポーツを切り替えてみても同じルートを提案されることがしばしば。今はハイキングもトレランもグラベルもマウンテンも「全部まるっとトレイル」にされちゃっているきらいがあります。これからは種目によってルートの最適化が進むと良いですね。


↑今のところはどれを選んでも、おすすめルートに大きな違いは感じられず

新機能にたどり着けない不思議

吉尾がどうしても見ることができていない画面が④の混雑状況と勾配チャート。従来の勾配グラフはもちろん表示されているのだけれど、リリースに載っているような絵面はありません。


↑新機能はこんなやつ


↑従来からある標高グラフ

混雑状況についても、どうやったらたどり着けるのか皆目わかりません。データが蓄積されていそうな北米エリアも検索してみましたが、結果は日本国内と同じ。サポートに問い合わせたところ4日後にはアップデートがリリース!吉尾の要望だけで動いた訳ではないでしょうが、さすがStravaの対応は速いですね。


↑追加された?勾配マップ


↑依然としてこの混雑状況画面には行きつけません!

日本のトレイルではトラブルのリスク?

そんなこんなで、吉尾に限っては最初の期待度ほどではなかったStravaアップデート。サブスク契約さえしていれば誰でも簡単にトレイルへアクセスできる仕組みは、チャレンジのハードル下げる良い試みだとは思います。けれど、この精度では、センシティブなところがある日本のトレイル事情には逆効果になってしまうかもしれません。


↑オフロードを走るなら、まずはラルートさんのこの記事を全力でおすすめしたいです

ログあり=走行可能、ではないかも

Stravaは「おすすめルートはユーザーの走行データの集計からアウトプットされる」といっていますが、そのデータが”正しい”かどうかまで判断してくれているのでしょうか?

というのも、日本の、特に都心に近いオープントレイルは自転車通行にネガティブなところが多いです。しかもその表現がまた、さまざまだったりするんですよね。侵入を止めるゲートがあればわかりやすいのですが、そうでなくても実は行政が通行を禁止していたり。はたまた公道に見えて私有地で、地権者に通行許可を取っていなかったり……


↑こういう道はわかりやすい

そんな中、我々サイクリストはどうかというと、残念ながらルールを無視する確信犯もいれば、知らずに走ってしまっていることもある。こんなふうに書いている吉尾だって「トレイルを100%正しく走れている」自信はありません。

つまり、何が言いたいかというと。Stravaに蓄積される走行ログには自転車で走ってはいけない道が含まれる可能性がある、ということ。北米などのように「トレイルは公に解放されたもの」ではない日本特有の事情を考えると、今回のStravaアップデートはグレーゾーンに隠れたモヤモヤを顕在化させてしまうリスクを孕んでいると思うのです。

グレーゾーンに白黒つける良い機会にも

日本のトレイル事情に詳しい方から聞いた話ですが、別のルート投稿アプリで実際にトラブルまで発展したケースがあったそうです。あるトレイルが公表されてから外国の方々が頻繁に走るようになり、地権者からクレームでアプリ側がルートを削除したのだとか。走っている方は「トレイル=パブリック」という”常識”ですから致し方ないところもありますが、日本人同士でそれは通りにくいですよね。

ただ、それが全てダメかというとそうでもなくて。リスクの顕在化をポジティブに捉えれば、今までは「知る人ぞ知る」状態を保ってきた日本のトレイルが変化していくきっかけになるかもしれない、とも感じます。


↑トレイルの持続可能性につながれば最高

例えば、ユーザーの投稿で通行止めなどのアラートが表示されるようになればどうでしょう?「せっかく来たから走ってしまおう!」というオフローダーのあるあるを抑止して、事故の発生を回避できたり。例えば、走れる道と走れない道が明確になっていくことで、走れるトレイルを維持したり、それを増やす活動につながったり。アングラ化している情報がオープンになることで、それにまつわる課題感も共有しやすくなるはず。

なんて言うほど簡単なコトではないでしょうし、楽観的過ぎる理想なのかもしれないけれど。個人的にはStravaのトレイル機能が投じる(であろう)一石をプラスの効果につなげていきたいと思ってしまうのです。

吉尾エイチでした。m(_ _)m

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