いろんなものが値上げとなった2022年の春。自転車業界も例外ではなく、各社の完成車はもちろん、シマノのパーツもこの5月から価格改定となりました。ちょうどディスクブレーキのローターを調達することになりましたので、モデルごとの費用対効果を検討してみたいと思います。
機能・重量・整備性と価格バランスをチェック
ブレーキローターに関して個人的に気になるポイントといえば、冷却性や対応パッドなどの機能性と軽さ。たいがいの自転車パーツは高機能=軽量=高価という公式が成り立ちますが、問題はそのバランスです。
冷却機能
ブレーキローターにおいては、高機能=冷却性です。ディスクブレーキはその摩擦熱によって制動力が低下するので、それを防ぐ放熱機能の有無が価格に直結。シマノのブレーキローターの場合は3段階にわかれています。
冷却機能なし
エントリーグレードのローターはステンレスの1枚板になります。
アイステクノロジー
ミドルグレードに装備される冷却機能。ローターはアルミの中心層にステンレスの外層を重ねた3層構造です。アルミを使っているぶん軽量でもあります。オールステンレスのノーマルローターに比べて−100℃の効果があるそうです。
アイステクノロジー FREEZA
3層構造のアイステクノロジーに放熱フィンと放熱ペイントをプラスした最上級グレード。ノーマルローターより−140〜150℃の冷却効果。
対応パッド
ディスクブレーキのパッドにはメタル素材とレジン素材があります。メタルパッドは硬いのでローターもそれに対応したものでなくてはなりません。メタルパッドは雨の日でも制動力が落ちにくく摩耗しにくいうえに、放熱性にも優れています。それだけにパッドもローターもレジン用より高価になります。
重量
シマノのディスクローターにはロードブランドとMTBブランドがありますが、ローターサイズと対応パッドがマッチしていれば互換OK。上位グレードほど軽くなる傾向も共通です。
整備性
ディスクローターのマウントには6ボルトタイプとセンターロックタイプがあります。シマノのロードコンポはセンターロック一択ですが、ロックリングには3つのタイプが混在していて若干ややこしいです。取り外しに使う工具が別なので、セルフメンテの場合は整備のしやすさも無視できないポイント。
内セレーションにはスプロケ工具、外セレーションにはBB用の工具を使います。BB用の工具はかかりが浅くナメやすいので、個人的には内セレーション推し。ちなみに上位グレードは内外が選べちゃったり、ロックリングにも軽量化のためアルミが使われていたり……至れり尽くせりです。
結果が全ての競技ユースなら最上級グレードのローターを選んでもそれは立派な「投資」になります。でも、ポタリングレベルの吉尾には全てではないけど「消耗品」の要素が強い。なので、自分にとって一番良さげなコストとパフォーマンスの「落とし所」を探したくなります。今回は愛車のローターサイズである160mm径に絞って、ワールドサイクルさんの実売価格を参考に比較してみましょう。
値上げでもベーシックグレードのコスパはグッド!
シマノのwebサイトで確認できるブレーキローターのラインナップは20種類くらい。その中から特徴的なモデルを5つ選んで比較表を作ってみました。
モデル | 本体重量 | 価格 | A重量比 | B価格比 | A×B | メタル仕様 | 冷却機能 |
SM-RT30 | 170 | 1200 | 100% | 100% | 100% | - | - |
SM-RT54 | 140 | 1250 | 82% | 104% | 86% | - | - |
SM-RT64 | 140 | 2500 | 82% | 208% | 172% | 〇 | - |
SM-RT70 | 133 | 3800 | 78% | 317% | 248% | 〇 | ○ |
RT-MT800 | 108 | 6100 | 64% | 508% | 323% | 〇 | ◎ |
※ローターサイズ160mm、価格は2022.5月現在
重量と価格のバランスの良さはSM-RT54が圧倒
表の「A×B」はコスパの定量面をにフォーカスした指標。最廉価のSM-RT30を100とした場合の重量と価格の比率を掛け合わせています。つまり、価格が倍になっても重量が半分ならばイーブンという判断になります。突出しているのはSM-RT54。完成車によく使われているモデルで吉尾のトップストーンカーボンにも付いています。
SM-RT54は実売価格がワンランク下のRT30とほぼ同じながら重量は2割も軽い。メタルパッドは使えず冷却機能もありませんが、ブレーキローターを消耗品として考えるならベストな選択です。メタル仕様はパッドも高価になりますし、ポタリングレベルのスピード域なら冷却機能なしでも実際そんなに困らないからです。
メタル仕様は”やっぱり”105
価格だけをみていくと、メタルパッドに対応した途端に大きく跳ね上がります。吉尾は耐候性や冷却性よりも、安価で音鳴りしにくいレジンパッドにメリットを感じますが、ロードでもMTBでもレースシーンにはメタルの方がマッチしているのかもしれませんね。
ロード界隈では「レースにでるならコンポは105以上」なんて言われたりしますけど、ディスクローターのコスパもメタル対応モデルの中では優秀。冷却機能もついているし、コスパといえばやっぱり105グレードですね。
最軽量がデュラエースではない不思議
シマノのディスクローター最軽量モデルはRT-MT800。MTBコンポのセカンドグレード「デオーレXT」シリーズです。最上級のXTRと重量は同じですが、価格は相当にリーズナブル。しかも、なぜかデュラエースよりも軽い下克上なモデル。軽量化のみ追求するならこれでしょう。ただ、ハイグレードモデルが長寿命というわけではないようなので、RT54が5枚も買えちゃうお値段は個人的にチト厳しい……です。
シマノパーツの価格が改定されても、ベーシックグレードのコスパの良さは健在。新しいローターもデフォルト同様RT-54にしたいと思います♪
吉尾エイチでした。m(_ _)m
コメント